キャリア支援でもサステナビリティは主流化する?

サステナビリティとキャリアの距離が、ぐんと近づいたのは、この5年ほどのことでしょうか。少なくとも約15年前、求人情報サイトの検索窓に「サステナビリティ」や「CSR」と入力しても、ヒットする求人はほとんどありませんでした。

それが今では、サステナビリティに関わる仕事を扱う人材サービスも珍しくなくなっています。

人材サービスの経験があり、現在はサステナビリティレポートなどを執筆、キャリアコンサルタントの資格も取得――という私にとって、サステナビリティとキャリアは、どちらも気になるテーマです。

そんな私のアンテナに、この夏ひっかかったのが、「グリーンガイダンス(Green Guidance)」という言葉でした。

グリーンは、緑、環境、持続可能性を示す言葉。 ガイダンスは、指導、手引き、案内を意味し、職業指導やキャリアガイダンスの文脈で使われる言葉です。

持続可能性や環境に配慮したキャリア教育

私がこの言葉に触れたのは、書籍『日本キャリアカウンセリング史』の中でした。

近頃の日本のキャリアカウンセリングでは、社会正義に注目が集まっていることが紹介され、そのなかでグリーンガイダンスにも触れられていたのです。

グリーンガイダンスを提唱したのは、デンマークのキャリア研究者、ピーター・プラントです。

1990年代後半に提唱されたグリーンガイダンスは、しばらく大きな注目を集めることはありませんでした。ところが、2015年のSDGsやパリ協定を経て、社会正義のキャリアカウンセリングへの関心が高まるなか、2010年代後半から改めて注目されるようになったそうです。

先述の書籍では「経済成長のみに囚われず、持続可能性や環境に配慮したキャリア教育」とグリーンガイダンスを紹介しています。環境に関わる仕事を学生や求職者に紹介することもグリーンガイダンスの一つです。プラントが非西洋のキャリア発達論を引用していることも、私は興味深く思いました。

キャリア支援にサステナビリティの考え方を組み込むことの可能性

この15年ほどの間に、企業経営の世界ではサステナビリティや人権尊重が主流化しました。かつてはCSR部門だけが取り組むものと考えられていましたが、経営戦略や調達、人事、製品開発など、ほぼすべての意思決定にサステナビリティや人権の考え方が組み込まれています。

同様に、キャリアの世界でも、サステナビリティがキャリア支援の「前提」となる変化が起こり始めているのかもしれません。

<参考文献>

  • 渡部昌平、浅野浩美、立野了嗣、小澤康司、下村英雄、三村隆男著、『日本キャリアカウンセリング史―正しい理解と実践のために』、実業之日本社、2024
  • 下村英雄著『現代キャリア心理学通論―職業指導から物語、社会正義へ』、一般社団法人雇用問題研究会、2026